龍の頭部を細部まで描写した通称「ドラゴンヘッド」と呼ばれる1950年代初期の作品。褪色したブラックのボディにグリーンの龍とカラフルな雷雲が映える。波打つ髭や躍動感あふれる鬣(たてがみ)など、曲線を多用した柄を横振り刺繍で描くには手間と時間を要し、当時も熟練の職人が手掛けた一着。全身まで描かれた胸の龍虎の刺繍も珍しい。
リバーシブル面は獲物に狙いを定め、鉤爪を構えて急降下しようとする鷲の絵柄。茶系のグラデーションで立体的に表現された翼の描写が美しい。晴天を想わせるブルーのサテン生地はエイジング加工により光沢が抑えられ、背景の富士山から流れてくる雲は鷲の尾羽のあたりまで描かれており、柄に奥行きを感じさせる見事な構図となっている。
ACETATE SOUVENIR JACKET
スーベニアジャケットのなかで最もスタンダードな両面にアセテート生地を使ったリバーシブルタイプ。戦後当時のスカジャンには、シルクに似た高級感を持つ物資統制外品目のアセテートが使われていた。中綿がないため季節を問わず着用でき、独特なドレープ感も魅力といえる。
スーベニアジャケット(スカジャン)とは戦後間もない頃、米兵が日本駐留の記念としてオリエンタルな柄(鷲・虎・龍)や所属していた部隊、基地名などを自分たちのジャケットに刺繍したのが始まりである。それらは土産物として商品化され、各地のPX(Post Exchangeの略で米軍基地内の売店の通称)で販売されるようになった。当時、このスーベニアジャケットをはじめとした衣料品を米軍基地へ納入していたのが、テーラー東洋(東洋エンタープライズ)の前身の会社「港商商会」であり、スーベニアジャケットの生産が全盛期となった1950年代には納入シェアの95パーセントを占めるほどであった。港商から始まり半世紀以上スーベニアジャケットを作り続けてきたTAILOR TOYO(テーラー東洋)。一過性のブームではなく、スカジャンを文化として継承し続けているこのブランドこそが、スカジャンのオリジナルである。
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